Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

「それに、ああいう病気はこちらの心の持ちようで違います」

どうして戦地へなど行く気になったのかと訊きたく思った。伸子に何の説明も与えず、佃は丁寧に挨拶して、ぎごちない足どりで人ごみの間に隠れた。

伸子は部屋に帰った。

閉め切ってあった部屋には、午後の穏やかな斜光とともに、むっとするいきれがこもっている。彼女は窓を広くあけた。そして、帽子をとり、外套を脱ぎ、先ず一休みという心持で、長椅子の上に横たわった。

彼女の両手は組合わされて頭の下にあった。その下にクッションがかさなって柔かく心持よく押しつけられている。肱かけの部分が高いので、長椅子は彼女の眼のところに程よい陰翳を与えた。暖かい……室内は絶対に物音せず、わずかに、開いた窓から気にならない程度に市街のどよめきが流れて来る……神経を撫で和らげられるので、伸子は眠いようになった。けれども、彼女は寝入りはしない。うっとりした眼をあけ、閃きのない老いた午後の日光の遊んでいる白い天井や小枝模様の渋い壁紙の上を眺める――考える。なぜなら伸子の心から、佃の古くさい黒い山高帽がまだ消えていない。……

佃に会い、彼と話すのは伸子にとって興味でないことではなかった。