Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
翌朝、老人にお早うと云う時、伸子は極りわるく、平気にしているのに努力がいった。老人の智慧で、老父はいつも通り穏やかであった。けれども、眼ざとい年寄りが、物音で目を醒し、納戸一つ隔てたばかりの彼方の部屋で、伸子がいろいろ云ったり泣いたりしたのを聴かなかった筈はない。
その日、動坂へ行く行かないについて、伸子はもう何も云わなかった。一時過ぎると、佃が、
「――今日、動坂へ一寸行って来なければならないことになりましたから、一人で明治神宮へでも行ってくれませんか」
と云い出した。
「ほほう――矢張り誰ぞ悪かったのか」
「お母さんが一寸――大したことじゃあないんです」
「それなら結構じゃ。――弁慶橋はじきじゃったのう――あの辺なら、若い頃よくぶらついたもんじゃで分っとる、あすこいら見物して来るさかい、心配せいで、ゆるりと行っておいで」
「じゃあ」
佃は伸子を促した。
「髪はもうそれでいいの」
動坂に彼らは夕方までいた。佐々も帰って、居合せた。伸子にとっては、辛い陪席であった。円テーブルを中央にして、大きな安楽椅子に佐々、向い合って母、佃はその間に坐って、ぽつぽつ話が交されたのだが、かたわらから聞いている伸子には、三人の心持が融合しないのばかり感じられた。