Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
今も、彼は明らかに心穏やかでないのだ――不思議な、伸子に責任はない理由で、それをまともに表さず、親切らしいお為ごかしの云いかたを、又してもする。彼女はいきなりつきとばすように、
「ちっとも邪魔じゃなかってよ、面白くてよかったわ」
と憎らしく口答えした。佃は、反感を沈黙に表して、着物を着換えに行った。伸子は、愛情からでなく、腹立たしさ、厭さ、憎らしさ、それらの感情で対手から離れられず、自分も佃の後を跟いて行った。本当は横田に対して、彼女の心持はもっと複雑なのであった。彼がしきりに机の方ばかり気にするのや、妙にききたがりのようなところがあるのなど、彼女は好きではなかった。それでも、夫のそう云う口の利きかたが、伸子の平静を奪った。伸子がいるのを知りながら、知らないように洋服をぬぎ、それを衣裳箪笥にかけている佃の、強情そうに太い耳のうしろの骨を見ていると、彼女は、盲目的に衝動がこみ上げて来るのを感じた。ああこの平気そうな様子! いじめて、いじめて、本音を吐くまで参らせられたら、どんなにすっとするだろう。こんなすました彼でない彼、こんなぬらりくらりした彼でない彼、その彼が見たい! その彼が欲しい!――しぶとく、叩きのめされてもここは退かないぞ。