Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「――しかし、世界じゅうが苦しんでいる時……」
「私は事情が許すあいだ本職をやめないでいいのではないかと思います。だって、戦場を駈け廻ることだけが人間のためではないでしょう? 戦争はどんなに永くたって激しくたって一時的の嵐だもの、私達はもっと眼を先につけてやって行っていいのだし、やって行くべきと思うわ」
伸子は、佃が若し強く自分の考えに信念を持っているなら、彼女のこの意見は彼を黙らせて置くまいと思った。彼女は佃の言葉を待った。が、彼は、
「ふうむ」
と唸ったなり、何も云わない。
「――勿論、自分の専門に見切りをつけたのなら話は違うわね、自分のしていたようなことが現在にも未来にもまるで意味がないと思ったのなら……」
伸子は、第二のさぐりとしてこれを云ったのであった。これが、佃の心の底にかくされている動機にふれ得るだろうかと。すると、彼は、彼に向ってまっすぐに進んで来た質問を躱し、極めて感傷的な語調で、独り自分に呟くように云った。
「どっちみち、私は先生の綽名通り苦行僧です。一生、大学の図書館のご厄介になって終ることでしょう」
伸子は、引きはずされたような、驚いたような顔をして佃を見た。