Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
その桜草は、裏の竹垣の下に先住の人が忘れて行った根から、ささやかな薄桃色の花を開いたものだ。伸子は、自分に向って何だか表情しているような可憐な花を、見るのもいや、どけてしまってもすまない、二半な心持で、永いこと眺めた。
とにかく、伸子は金しばりのような佃の掴みを全身に感じた。根本は何であれ、彼は自分を放したくない、占有から解きたくないのだ。
伸子は、彼の切ないであろう気持も、通じていない訳ではなかった。二人が結婚してから、彼ばかりいい目を見ているどころか、普通から見れば、伸子はずいぶん、我ままな女房であった。彼を一人残して旅行に出た。寝坊であった。伸子には、そういう日常の些細な自由をさえ、妻となれば大特権のように貼紙つきで与えられるという云い難い憂鬱、夫が、それらさえ与えておけば、不満を云うべきものもないように、他を省みない魂の孤独さがあった。これは勘定の外にするとしても、彼が、結婚について周囲から受けた批評は我慢ならないことが多かった。佃は、最初から愛なくて伸子を騙し、自分の社会的地位を作ろうとしたように云われた。彼としては、今、伸子と別居し、世間に家庭生活の破綻を示し、従って自分に加えられた評言を事実で裏書きするようなことは、全く苦痛であろう。