Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
蚊帳の裾が、涼しい籐の敷物の上に落ちて重い音を立てた。
廊下を行くと、燐光のような月の光が、閉め連ねた障子の面に照っていた。伸子は、雨戸に切りはめた硝子窓に、顔を押しつけて外を見た。庭じゅうに月がさしている。その中を歩いたら髪に燦く液体がねばりつきもしそうな光波につつまれ、円い躑躅や檜葉がくっきりと黒い影をしたがえて鎮まりかえっている。樹や芝生が夢幻的に、生あるもののように思えた。この月夜には、人間の霊魂も遠くたやすく伝わりそうだ。何百里も離れたところで、妻である女とその母とが、あんな会話をした。それがこの夜、もし佃の魂へ響いて行ったら、彼はどんな心地に打たれるであろう。
伸子はむきになって、二三度、力いっぱい月光の漲る硝子の面をこすった。雨戸を抜け、月光の浸った夜気の中へ泛み出して行く魂の波動を、いそいでごちゃまぜにして、遮り止めようとでもするように。
二
十月になって、伸子は東京へ帰った。一月半ばかり前、佃と那須へ行くに同じ線を北に向った時分と、風景はすっかり違った。一面秋であった。
上野の構内に列車が入ると、赤帽を呼ぶために、伸子は早くから窓をあけ、プラットフォームを見ていた。