Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
どこにも病気などなさそうに、胸郭の広い厚い胸であった。
「――しっかりした骨格ですね」
医師は、精神療法として、佃の皮膚の指先をふれながら云った。
「ほら、あなたの皮膚はこうやって見ると、十分脂肪もあるし、血色もいいし、弾力もありましょう。どうして、本ものとなったらこうは行きません」
「大きい息をして。小さい息をして」
「大きいのをもう一つ」
伸子はそばで見ていて、そのとき、夫がしんから哀れになった。津山に命じられる通り、彼は真心こめ、眉を上げ、大きい息を吸う。気をつけて小さく息をする。伸子は、彼がこんなに真剣で全心的なのを、どんな場合にも見たことがなかった。彼も生きたいのだ。それでこそ正直だ。伸子は、鼻のしんが酸っぱく、しみるようになって来た。手洗いを用意して戻ると、もう佃は着物を着かけていた。
「いかがです」
アルコオルの香のする脱脂綿の小片で、聴診器を目立たぬように拭きながら、津山が答えた。
「別に私は異常を認めませんね、一寸――ほんの一寸、左の方に雑音があるような気もしますが、そのくらいのことは、一時的に誰しもありがちのことですから」
佃は、今朝から自身を非常にいたわり、声さえ力を入れて出さなかった。