Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
行ってもよくて? 或は、ね、いいでしょう? と自分が云うのを待っている夫の期待を感じたが、伸子は意識して沈黙をまもった。伸子の心には、捨身になった結果生じた余裕のようなものがあるのであった。
暫くして、佃が露骨に喧嘩っぽい調子で詰問した。
「――気を換えに行くんですか、それとも別れるために行くんですか――こちらにも都合があるから聞かせて下さい」
語気は激しいようであったが、それを本気の本気で佃が云っているのではないことを伸子は直覚した。これまで、いつも自分が間抜けに佃の云う言葉を最大限に受け、その場で結着をつけようとしたため失敗ばかりした。伸子はそれに気づき、妙な笑いを浮べながら逆に訊いた。
「あなたはどうお思いになるの?」
佃は、自分からはどちらにも見当をつける冒険を敢てしきれず、憎しみをこめて横目で伸子をにらんだ。その顔を見ると恐怖の代り、彼女自身をおどろかして、切れ切れな軽い意地悪な嗤いが勃発した。彼女は毒々しいところのある優しい声でゆっくり云った。
「――憎らしい?」
佃は体のどこかを突き刺されたような恐ろしい表情をした。夫の苦しみが伸子の魂に焙りついた。