Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

俥を呼ばせた。荷物だけ乗せて動坂へやった。スウト・ケイスが小さいので、俥にそれを幾重にも括りつけた細引の方が目立つようであった。

佃が帰らないうちに出かけてしまうことはさすがに躊躇された。伸子は悲しく揺れる心で三時過まで愚図愚図していた。が、やがて彼があの声と眼とをもって、これまでの毎日通り格子を開けて来るだろうと思うと、彼女は急に家を出る気になった。

「じゃ、どうぞ気をつけてね」

表通りへ出るまで、左右生垣つづきの横通りが二町ばかりあった。そこを帛紗包みを抱えて歩きながら、伸子は背後が気になり、我知らず急ぎ足になる厭な気持を経験した。通りはずっとまっすぐ、彼方の大通りまで直角に続いていた。伸子らの家も在る長方形の一区画を凹形に囲んでいるのであった。佃が勤め先から帰る路はきまっていた。凹形の右の道をずっと来て煙草屋の角を左へ、今伸子が歩いている横通りへ曲って来るのだ。いつも人通り尠い細道であったから、彼が角を曲れば、遠くからでも伸子の後姿は見えるわけであった。何かの都合で彼がいつもより三十分早く戻り、あの角を曲った拍子に自分を見はしまいか。後から速足で来たり、口笛をふいたりしはしまいか。