Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
耄碌なさりながら、時々いやにはっきりなさるから、却って面倒なのよ」
「ふむ……。――だが、伸子、お前何じょに考える? 本当に俺が売ったべか」
伸子は、心が平らな時には、はははと思わず笑って、
「私にわかろう筈ないじゃあないの。念のためそれじゃ先方へおききなさいよ」
と云った。自分の思いだけで十分神経が亢っている時、しつこくしつこく云い出されると、伸子は怒りつけるのであった。
「お祖母さま、少しは空でも眺めてぼんやりしている工夫をなさい」
伸子は六畳の隅に、古本箱を脚にし上に紫檀の机をかぶせて、テーブルを拵えた。廊下の外は庭、その奥は畑であった。障子についている小障子をあけると、庭と畑とを区切っている低い草堤と勢いよい梅の並木の一部分が眺められた。光線が斜に射す午後、その狭い並木、叢の風景は、荒廃した園の趣と初夏の緑の活々した輝きとを相交え美しかった。
伸子の心持は、陰鬱で敏感で、しんががらんと寂しかった。先、佃を恨んだり自分を鞭打ったりしてここにいた時分は、心がむらむらしていたから、周囲の自然など、そう深く自分に浸み透っては来なかった。今の伸子の心は、病的に澄み沈潜していた。