Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
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今も彼女は確かに行きたくはなかった。けれども、父が出たあと、ぽっつり独りでホテルの部屋に十二時頃まで閉じ籠ることを考えると、それもあまりぞっとした役廻りとも思えない。
伸子が足をふりふり愚図愚図している間に、佐々はそれにかまわず活動家らしい足どりで寝室に行った。間もなく、開け放した扉から、水のばしゃばしゃいう音、髪ブラシを置く軽い乾いた音などが響いて来た。窓からは、宵っぱりな都会の眠気知らずなざわめきと、向い側の建物の屋根の頂に廻っている広告イルミネーションの気ぜわしい明滅。下界の燈火を反射して、ぼうっと潤いを帯びた黒い夜空の一部が見える。
伸子の胸にいきなり、
「おいてきぼりにされては大変だ!」
と云う、子供らしい切ない思いがこみ上げてきた。
彼女は、いそいで椅子を立ち、父の後を追った。佐々は、もう髪の手入れもすみ、部屋の真中に立って上着に片手を通しかけているところであった。それを見ると彼女は慌てて云った。
「すまないけれど一寸待って下さらない? 私、やはり行くわ」
伸子は足早に鏡の前に行った。
佐々は、時計を見た。
「もうあまりゆっくりはできないよ」