Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

人生には何かもう少し違った形があってもよかりそうなものだ、という気が、結局にゆくと、いつも伸子の心に強く生じるのであった。

佃は結婚という字さえ自分の口から云い出したことはなかった。けれども、彼は何と苦しむことか! その苦しがりようを見ると、伸子は彼が、真に求めているものの何かを、感じずにはいられなかった。彼が進んで云い出す権利を、自分自身に許していないので、なおさら、その内に争っている心持は、伸子に苦しく責任をもってかかって来るのであった。

四五日で三月になろうとするある晩のことであった。

伸子は独り部屋にいた。自習時間で、寄宿舎中、最も静かな時刻であった。時々、コンクリートの廊下を歩く、小さい靴の踵の音がするだけだ。伸子も机に向っていた。緑色笠の読書用電燈が、帳面の白い紙面や本の背革をしんと照している。伸子は、ミス・プラットのところへ持って行くために、竹取物語の一部を書きとっているのであった。

物語は、元から彼女のすきなものであった。自分から選んだ仕事だから、彼女は感興に満ちて、日によると面白さにつり込まれ、文法の間違いや、途方もない言葉使いに頓着なく、没頭するのであった。