Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
ました。
佐吉の妻のおさよは、打ち付けて諫めもならず、唯おろおろとするばかり、偶々嫉妬がましい事を言っても、相手が人形では反って物笑いにされてしまいます。先代から使われて居る大番頭は、苦り切って幾度も開き直りましたが、この無生物の恋に溺れ切った若主人は、まるで相手にしようともしません。
狂態は日に日に募りました。人形と佐吉は、斯うして、本当の夫婦も及ばない、艶やかな愛情に任ね切って、どうかすると、佐吉の膝の上に人形が乗って居たり、二人は犇と抱き合って居たりするところを見せ付けられて、雇人達は思わず仰天することもありました。
不意に――その恋人の人形を失った佐吉の驚きはどんなでしたろう。
真っ青になったまま声も立てず、暫らく離室の内外を見廻しましたが、其の辺には影も形もありません。
一歩外に出て見ると、縁側に白々と落ちたのは、人形の差して居た鼈甲の簪です。ハッと思って、五、六間先の廊下をすかして見ると、
「あッ」向うに動くのは、人形を抱えて走る、女房おさよの後ろ姿ではありませんか。
おさよが人形を土蔵の中に引き入れて、その美しい顔へ匕首を振り上げた時、佐吉は危うく後ろから飛び付きました。