Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
高円寺の停車場近くなった頃、
「待って下さい」
後ろから私の肩を押えて、ハアハア息を切る者があります。振り返って見ると、ツイ今しがたこの女を売ったばかりの巽九八郎が、靴足袋の儘の跣足で、私の後ろを追っ駆けて来たのでした。
「何んです」
「貴方は、蔵園さんでしたな、それで安心しました、これが筋の悪い者の手に入ると取り返しが付かない――」
「何うしたと言うんです」
「何んでも無いんです、この女を返して頂けば宜いんです」
「エッ」
「あれは冗談ですよ、あんな馬鹿な事があるものじゃない、人間を競売するなんて、そんな馬鹿な事が、ハッハッハッハッ」
不気味な空洞な笑いが、夕闇の中に突っ走ります。
「今更そんな事を言っても仕様が無い、君は金を受け取った筈だ」
私は少しムッとしました、この人格の破産者は、日頃借金を踏み倒すように、競売の結果までも無効にしようとするのでしょう。
「小切手は返しますよネ、それで文句は無いでしょう」
懐を探って、出し惜むように小切手を引き出し、皺を延したり、畳み直したり、時々は媚びるような薄笑いを、私と妙子に送ります。
一番困ったことは、高円寺の通りの近くではあり、人の出盛る時分で、此の掛合を繞って、段々人立ちがして来ることでした。