Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
待ち疲れた心持で、何時ともなしに桜子は眠りに陥ちて居りました。
揺籃の中で眼を覚した赤ん坊のような心持で、フト眼を開いて見ると、矢張り二枚折の蔭に、藤色の大振袖を着た、美しい若衆が思案に余る風情でションボリ坐って居ります。
「あッ」
それでも軽い驚きの声が、桜子の唇を漏れます。
「お目覚めで御座いましたか桜子様」
二人はソッと顔を見合せました。
誘われるように、桜子はニッコリして、思わずハッと顔を引き緊めます。
「お帰り、お帰りッ、もう此処へ来てはいけない。大きな声を出して人を呼びますよ」
急に、娘らしい恐怖が蘇返った桜子は、床の前に起き上り乍ら、それでも低い声で斯う言いました。
こんな事を期待するともなく、今宵は帯を解いたまま、平常着をそっくり着た桜子は、床の前へキチンと坐ると美しい顔を硬ばらせて見せます。
「何を仰しゃるのです桜子様、貴女の本心は決してそんな筈は無い、ツイ先刻までは、心待ちに私を待って入らしったでは御座いませんか」
「エ?」
図星を指されて、桜子は思わず顔を赧らめました。
「何も彼も存じて居ります。父上様に仰しゃろうとして思い止まった事も、小間使のお春に、側へ寝てくれと一度言い付けて、後からそれには及ばないと断ったことも――」