Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
「…………」
「母の歎きはどの様に深かったか、捨てた男には思いも及びません。親達にそれ見た事かと言われるのも辛く、世間の人に顔を見られるのは尚お浅ましい、到頭家出をして了って、せめて相生長者を見返すような男をと、二度目に契ったのは、金も家も無いが、その代り器量だけは人並すぐれて立派な浪人者でした。間もなく生れたのは此の私――」
長物語に綾吉の苦痛は募る様子、我にもあらず、高蔵人の膝に縋ってホッと熱い息を吐きました。が、言うだけ言わなければと言った勇猛心に促がされて、次第に死の色の濃くなり行く顔を屹と挙げています。
「夫の浪人者は、武術修業の為と言って家を出たっ切り、三年経っても五年経っても帰りません。可哀想な母親は、二度目の男にも捨てられてしまったのです。それから気が変になって此の振袖を抱いたまま、怨み続けて死んでしまいました」
「…………」
「その忘れ形見の私が、素姓を包んで相生長者の屋敷へ住み込んだのは、言うまでも無い母の怨みを報ゆる為、――何うしたら腹の虫が癒えようか、長い間肝胆を砕きましたが、年取った旦那様に、思い知らせたところでまことに冴えない話、私は手段を変えて、お嬢様の桜子様を狙ったのです」