Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme

Aozora Bunko

漸く外へ出ると、礼子の影も形もなく、折柄エレベーターが八階へ着いたばかりで、その網扉を私の前へ開けました。飛び乗るように、

「早く早く」

と急かせると、私とボーイだけ乗っけたエレベーターは、七階へ――六階へ――勢いよく降りましたが、丁度それは五階と六階の間に来た頃、何うした事か、ピタリと停まってしまいました。

「あッ、誰か上で扉を開けた奴がある」

エレベーターボーイはいまいましそうに、

「閉めろ、扉を閉めろ」

と怒鳴りましたが、深夜のビルディングの中に木精するばかり、何処からも返事をする人間はありません。エレベーターは、何処かで扉を開けられると、スイッチが絶れて動かなくなるのですが、それが丁度六階と五階の間で、網戸を開けても、上へ乗ることも出来ず、下へ潜ることも出来ず、私もエレベーターボーイも、暫らくは檻の熊のようにまごまごするばかりでした。

折柄、朗らかな伊太利の小唄――、夜のビルディングの空気に、遠慮もなく美しいメツオ・ソプラノを響かせて、上の方から香川礼子が降りて来たのです。

「左様なら、檻の熊さん、ちょいと面白い冗談でしょう。――もうお目にかからないワ」