Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

……白粉の匂い、口紅の色、カランカランという賽コロの音、お酒、ご馳走、いい争い、悪口、組打ち、笑い声……それでいてみんなが仲がよくて、そのくせみんなが仲が悪くて、しかも元気で活気があって、そうして全体が平和なのだよ」

「そうだよ」

といったのは兄にあたる武士で、莞爾という言葉にうってつけの笑いを、その口端に漂わせたが、鈴江の話の後をつづけた。

「そこへ集まって来る人間こそは、人間の中の人間なのだよ。虚飾だの見得だの外聞だの、ないしは儀礼だのというようなものを、セセラ笑っている人間なのさ。が、他面からいう時には、浮世の下積みになっている、憐れな人間だということができる。で、彼らは怒っているのだ。浮世と浮世の人間とをな。……そうしてそういう人間こそ、本当の人間だということができる。本当の人間とは交際ったほうがいい。いざという場合に役に立つ」

しかしやっぱり小次郎としては、石置き場の空屋敷へ行くということが、どうにも心に染まないらしい。で、頑固にいうのであった。

「いやでござります、いやでござります」しかし小次郎の思惑などに、船はかかわろうとはしなかった。

下流へ下流へとすべって行く。