Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

ここは家号を「笹家」といって、水戸様石置き場の空屋敷の中では、かなりに大きい私娼宿なのであった。

それにしても紋也は一人だけで、そうやって飲んでいるのであろうか? 紋也の供をしてここへ来たはずの、庄田、菰田の二人の門弟の、姿の見えないのはどうしたのだろう? 二人の門弟は土間から上がって、奥の小座敷の屏風の蔭あたりで、白首を相手に遊んでいるのかもしれない。しかし紋也は一人だけで、酒を飲んで喋舌っているのではなかった。

女煙術師のみなりをした、お粂が同じ卓袱台を前に――もっとも少しく片隅へ寄って、山県紋也を見守りながら、両手の肘を卓袱台の上へ突いて、両の掌で頤をささえて、いたずらっ児らしい顔付きをして、床几に腰をかけていた。

「さて何かを祝おうではないか」こう紋也が五度目にいって、四辺へ眼を配った時に、不意にお粂が声をかけた。

「妾をお祝いなさいまし」それから右の手を前へ出したが、「一ついただこうではございませんか」

恋のお粂

――妾をお祝いなさいまし。……ひとついただこうではございませんか――こういってお粂が右の手を出して、紋也から盃を貰おうとしたが、紋也は素気なく首を振った。