Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
しかるに駕籠の中の女であったが、美作がそこにいることなどを、知っていても知らないというように、小次郎に向かって話しかけ、小次郎に向かって手をのばし、これものばした小次郎の手を、恥ずかし気もなく握りしめて、駕籠へ近々と引き寄せて、そうして自分では駕籠から外へ、胸から上を傾けて、そうして顔を下げて行って、上向いている小次郎の顔へ、今や落としかけようとした。
「姫! 穢らわしい! 狂気なされたか!」
――で、美作は声をかけたのであった。
美作ほどの人物に、辛辣に声をかけられたのである。姫君姿の駕籠の中の女はハッとして態度を変えなければなるまい。しかるに女は変えなかった。同じ態度を保っていた。これはなんたる好奇的な形か! 緑色の衣裳と緑色の被衣を、一様に着ている女たちを、四本の常磐木にたとえたならば、緑色の小袖に覆面姿の、四人の武士たちも同じように、四本の常磐木にたとえることができよう。その常磐木に囲繞されて、黒塗りの駕籠が中央にあるのは、岩といってもよさそうであった。その岩から外へはみ出して、一叢の花が咲いていたがその中の純白の大輪の花が、得ならぬ芳香をあげながら、ゆるゆると下へうつむいて行く。