Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
でもしお粂が何かの機会で一足門外へ出たならば、二品を手中に入れることができよう。
いやいやお粂一人だけではない――京師方の人であるお粂や金兵衛をかくまっている屋敷であるからには、例の儒者ふうの老人をはじめ、屋敷にいるほどの人々は、京師方の人々と見てよかろう。だからそれらの人々の誰かが、何かの機会で門外へ出て、この二品を見たならば、即座に手中に入れることができる。
これに反して美作や兵馬が、さっきの乱闘で、一旦は逃げても、屋敷のようすをうかがおうとして、ここらあたりへ立ち現われ、もしも二品を眼に入れたならば、手もなく奪って行くことができる。しかし屋敷からは人も出ず、誰もが来かかろうとはしなかった。
屋敷の門にうずくまって、眠っている嘉門の正面の、月光に明るい往来の上に、その月光を白々と受けて、微風に顫えながら巻き奉書と、綴じ紙とが置かれてある。
一番鶏の啼き声がして、夜の深さを教えたが、まもなく啼きやんでひっそりとした。
と、その時一個の人影が、佐久間町の入り口の方角から、こなたをめざして歩いて来た。酒にでも酔っているのであろうか? それとも怪我でもしているのであろうか? 右へよろめき左へよろめき、立ち止まったり小走ったりして、さもたよりなげに歩いて来る。