Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
で、今一人の女煙術師が、往来で煙術を使っている。まず煙管をポンと上げたが吸い口を口へ持って来た。深く呼吸を吸ったかと思うとモクモクと煙りを吐き出した。首を左右前後に振る。それで調子をとるのであろう、はたして空へ文字ができた。幾個か幾個かできたのである。が、なんと書かれたものか、それはほとんどわからなかった。というのは空に月こそあれ、そうして月光が満ちてこそおれ、今日の時刻でいう時は、十二時を過ごした夜だからである。夜の暗さにぼかされて、煙りの文字がわからないのである。
とはいえ女煙術師が、すきとおるような綺麗な声で、その口上を述べ出したので書かれた文字も明らかになった。
「ただ今書きました煙りの文字は、和歌の一首でござります。『くもるともなにか怨みん月今宵晴れを待つべき身にしあらねば』こういう和歌なのでござります。どういう意味かと申しますことは、いまさらわたくしが申さずとも、ご承知のことと存ぜられます。辞世の和歌なのでござります。こういう和歌を作った後で、その人は不幸にも切られました。そうして獄門にかけられました。では悪人かと申しますに、決してそうではございません。