Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
何も恐れるにおよばない。俺は決して役人ではないよ」ここで口調を優しくしたが、「見受けるところ、浪人らしいの」
「は、さようにございます」浪人の本当の心としては「そち」と下目に呼ばれたり、「何も恐れるにおよばない」などと、威嚇的に物をいわれたこと不快でもあれば業腹でもあったが、例の理由のない圧迫に押されて、そういう本心を出すことができず、つい和しく慇懃にそんなように口から出したのであった。
と、武士は肩でうなずいてみせたが、
「俺の屋敷へ遊びに参れ」不意にこんなことをいい出した。
浪人は意外に感じたのであろう、ぼんやりとして黙っている。
「俺はな、久しく探していたのだよ」そういう浪人のようすなどには、かかわりがないというように武士は後をいいつづけた。「お前のような人間をな。浪人でそうして腕が立って、人を殺した経験のある。……俺にはわかるよ、殺したことがあろう?」
今度は浪人は怯かされたらしい、思わず二、三歩後へ下がった。
「で、姓名はなんというな?」
――いったいこれはどうなるんだ? これが浪人の心持ちであった。追っかけ追っかけ訊かれることが、いちいち浪人には恐怖だからである。