Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
先ずどちらにしても、古今東西、足が誘惑する事において変りはない。
先ごろ女中のお梅が市場へ蛸を買いに行った時、なるべく足の沢山あるのを下さいといったら魚屋のおやじが、蛸の足は昔から八本ときまってますと答えた。随いて行った私の子供が帰ってから、皆にこの事を話したのでわれわれは笑った。しかし、お梅の弁明によると、蛸の足は決して常に八本揃ってはいないというのであった。買って帰ってよく調べて見ると、往々にして一、二本不足している事がごわすというのだ。
なるほど、蛸もあの素晴らしき足の八本を裸のままで見せている事は真に危険だと私は思った。全く、いつ何時、如何なる災難がふりかかるか知れない。砂地の上で昼寝のせつ、猫にたべられた話もある位いだ。
蛸に意識があったら必ず靴下と猿股をはくであろう。
それにしても、毎日市場へ通うものは、またその道に通じて、蛸の足は常に必ず八本ではないということを知るに至る。するとわれわれ笑ったものは蛸に関しては素人であった訳である。
私の愛猫フク子もまたこの足に迷って死んだ。或夜、裏長屋から一本の蛸の足を盗んで帰る途中、長屋の井戸の屋根が腐っていたため、踏み外ずして落ち込んでしまった。