Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
衣服と皮膚との間に一つの汗という汚水の層を持つ事は全く不愉快な事だ。浴衣の汗は直ちに拭い去る事が出来るが洋服の汗はカラーによって封じ込められているため、手を入れるべき隙間がない。やむなく体温が汗を乾燥させるまでじっと忍耐しなければならない。この間の皮膚の触感位情ないものはない。窮屈な場所で紳士は羅紗のモーニングを着用し、あるいは女は素晴らしき帯を幾重にも胴体へ捲きつけていると、胸も臍も夕立を浴びているにちがいない。誰れも彼も悉く汚水の層を馬の如く着用しているのかと思うと私は甚だ気の毒に思えてならない。汗を直ちに気体とする下襦袢はないかと思う。
さて私の印度洋は湿気と雨と風とで日本の梅雨を思わせ、私はその風に当って軽い風邪を引いてしまった。印度洋で風邪を引くという事は全く私のプログラムにはない事だった。さすがに紅海は太陽の光と熱砂の霞と共に暑かった。汗と砂漠の黄塵によって私の肉体も顔も口の中までも包まれてしまった。そして地中海に入って漸く初秋を感じた時、顧みて何処が最も暑かったかを考えた時、私は日本の八月の神戸港頭に立った時と、殊に門司の街を午後三時に散歩した時のやるせなき蒸暑さが直ちに思い出された。