Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
縁もなきよその火事でさえも一応は火事半纒を着用して、えらいこっちゃ、近い近いと走り出した。そして彼らは火事が終わりを告げ、火の気がなくなるまでかえっては来なかった。それくらい若い男たちは退屈だったのだ。丁稚や私の幸福は、すなわち火事と夜店の八の日だった。それは八日、一八日、二八日に出るところの大宝寺町の夜店だった。母はその日がくると今夜はよのよだといった。すなわち横町の夜店の略称だ。すなわちよのよの日は女中も番頭も丁稚もめかしこんでぞろりぞろりと繰り出すのだ。暗い町が急に明るくなり、淋しい町が急激に賑わうことは何といってもわれわれを昂奮させた。まったく夜店は夏は夏で西瓜と飴湯に暑さを忘れ、冬は冷たい風を衿まきで防ぎつつカンテラの油煙を慕って人々は流れて行く。ことに年末の松竹梅と三宝荒神様のための玉の灯明台、しめ縄餅箱を買うことは、われわれの心へいとなつかしき正月の情趣を準備させることだった。春になって風の温かい日がくると夜店の灯火は誘惑をことのほか発揚する。そして何といっても夜店の誘惑は夏である。
人間が不思議な温気と体臭を扇子や団扇で撒き散らしながら、風鈴屋、氷屋、金魚屋、西瓜屋の前を流れて行くのである。