Japanische Klassiker mit Furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Lesen Sie 山を思う (やまをおもう) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.814 Zeichen · 157 Bildschirme
登山服、何やかや詰め込んだルックサック、鋲を打った靴、私のルックサックのポケットにはロック・クライミングの教科書が入れてあった。これはこの本の写真を見て、その通りの格好をして私が岩を登る処をT君が撮影する手筈になっていたこと迄喋舌って了うと、正直すぎて莫迦らしくなる。とにかく二人は車室内の視線をあびて――もっとも三四人しか乗っていなかった――いささか照れていると、前に坐った中年の男が、たまり兼ねたと見えて口を切った。「どちらへお越しです?」
槍とか穂高とかいうのなら即座に返答するのだが、前にもいったように相手はいまだ正体の判明しない山である。なんだい、Sに登るのにこんななりをして……といわれそうな気がしたので、私は「ちょっとAまで行きます。」と下車駅の名を云った。そして「あなたは?」と問い返すと、「わしもAまでです」との返事。いきなりポケットから地図を出して「恰度いい都合ですから伺いますが、こゝに温泉の符号がありますね。どんな温泉だか御存知ですか。」
するとこの男は立ち上って、私の横に腰を下した。そしてT君と私とをかわりばんこに見ながら、S温泉の説明をしてくれた。