Japanische Klassiker mit Furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Lesen Sie 山を思う (やまをおもう) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.814 Zeichen · 157 Bildschirme
彼は死んだ女房の弟の十九になるのをつれて、山田さん夫婦を鹿島槍へ案内する。鹿島槍と来れば吉田絃二郎さんの「静夜曲」に出て来る「O町」以上に、信州の大町であることがハッキリ判るだろうが、別にそこにモデルがある訳ではない。が、ヒントはある。数年前、Kという案内者が発狂して死んだ……たゞこれだけの事実である。
自分を信頼しきっている三人の若い男女をつれ、彼等に対する全責任を負って山へ入ることは、彼に新しい元気と体力とを与えた。が、何かしら彼は重大な忘れ物をしたような気がしてならぬのである。しきりに考えるが、どうしても思い出せぬ。時々トンチンカンな返事をして笑われる程、一所懸命に考えるのだが、何を忘れたのか、どうも見当がつかない。
鹿島川の岸で弁当にする時、彼は突然思い出した。マッチを忘れて来たのだ。四人の一行に対して山田さんが一箱と彼が一箱、いずれも煙草用のを持っているだけである。炊事、焚火等に、これでは足りない。いや、マッチ一本あれば雨中生木で焚火をすることも出来るが、何かの場合、これでは心細い。自分はとにかく、また義弟はとにかく、更に山田さんはとにかく、万一山田さんの奥さんに不自由な思いをさせては申訳ない。