Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
。私もあの晩のことを思い出して、なんともいえぬ、肌寒い気持を感じたのでございますが、その時は私もまだ二十六、七くらいの若い時分でございました。いままで稼業大切に働いて道楽一つした覚えもございませんから、女と共寝をしたのはこれが生れて初めてでございました。派手な長襦袢一枚で震えている、初めてもらった妻というものがどうにも私の目には可愛く見えて仕方がございません。やがて今の気味悪い話なぞも忘れるともなく頭から消え去ってしまったのでございます。
やがて母屋の方で時計が四時を打ちましたし、納屋の方から一番鶏の声なぞがいたしまして、もう眠る間もございませんから、その晩はとうとうそれきりまじまじと床の中で夜を明かしてしまいました。そして夜が明ければいくら結婚早々でも、やはり商家のことでございますからまた店の方も手伝わなければなりません。それに家の中も私の気持もなんとなしに賑やかに浮き立っておりましたから、いつかのあの血だらけになった女の人の話を阿母にもう一度聞いてみようみようと思いながら、つい取り紛れてそれなりだったのでございます。
そして前夜からのことはそれきりすっかり忘れ果てていたのでございました。