Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
「おや、ほえてるのは、五郎丸のようだが……?」
と久住博士は、ふと夕餉の箸をおいて、ふつうではない犬のほえかたに耳をかたむけました。
そのころ、いいえ、そのまえから、この医院の飼犬の五郎丸が、くれかかった坂の下のほうの闇にむかって、しきりに喉のおくで、妙なうなりごえをたてていたのです。
犬のするどい嗅覚には、なにか人には見えない闇にうごめく異様なけはいが、それとわかるのでしょうか。いよいよちかづくそのけはいに、五郎丸のうなりは、ますます烈しくなってまいりました。
ウウ、ウウ、ウォーッ! ウウ、ウヮン! ウヮン! と、おどりあがったり、矢のように、門のほうめがけてかけだしたり、気もくるわんばかりに、はげしくほえたてていたのです。
なるほど! この犬がほえるのもどうり! 歩いてきたのか? けむりのようにしのびこんできたのか? とつぜん、白いすがたが、パッとこの暗い門のなかへ、うかびあがってきました。
と、この物語はこのへんからはじまってまいります。
それは、赤ン坊をせおって、この寒空に単衣ものをきた、ひとりの老婆のすがただったのです。しかもこの老婆は、いったい、足音もたてずに、どこからあらわれてきたのでしょう?