Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
ともかく犬は、ふだんとまったくかわって、牙をいからせ、歯をむきだして猛りくるい、いまにも老婆にかみつかんばかりです。老婆もまた、そのものすごい形相から察すれば、この猛犬におどりかかるかもわかりません。
が、そのとき、犬のほえかたがあまりにもすさまじいのにおどろいてか、玄関に灯がさして、平松という看護婦もでてくれば、かかえ車夫の吉蔵も、あきれかえったように勝手口からとびだしてきました。
とたんに、今までものすごかった老婆の形相が、ハッとしたようにおだやかな表情になって、
「しっ! しっ!」
と、おとなしく、傘で五郎丸を追いはらっているのです。
「まァ、どうしたんでしょうね? あんなにほえて! 吉蔵さん、早く、追ってあげて……」
「これ五郎丸! てめえ、いいかげんにしねえかい! ほえるんじゃ、ねえったら! ふだんめったにほえねえのに、今夜にかぎって、どうしたってんだ! これ! やめろったら!」
「だめよ、そんなことぐらいじゃ! 早く、つれていってしばってよ」
「これ! もうだまれったら、だまんねえか!」
それでも犬は、必死になって、おさえた吉蔵の手をふりもぎり、地面をけって、なおも、老婆に立ちむかおうとしているのです。