Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
「ご隠居さま、およびでいられましょうか?」
と、つぎの間から小間使の早月が、ねまきすがたではいってきました。
「早月、眠っているところを起して、気のどくですが、ちょっとそのあんどんのうしろのほうを、見てくださらぬか」
と老母は、見えぬ目をしばたたきました。
「そこに、だれかおりませぬかえ?」
「え、いいえ、どなたもべつだんに……」
「そのへんに、血でもたれてはおりませぬかえ?」
「え、血が?」
と、早月は、びっくりしたように声をあげました。
「いいえ、ご隠居さますこしも……」
と、気味悪そうに、たたみに目をおとしているのです。
「では、それでいいのだよ、ご苦労でした。わたしは目が見えないから、それをおまえにたしかめてもらいたかったのです。それでわかりました。さ、もういいから、いっておやすみ!」
「ご隠居さま、ほかに何か、ご用でも?」
「いいえ、もうそれでいいのです。さあさ、行って早くやすんでおくれ!」
もちろん老母は、早月にもなにひとこといいませんでした。そして早月のさったあと、見えぬ目からポロリポロリと涙をしたたらせながら、床の上に起きなおってくちびるを噛みしめていましたが、このときどこからともなくあらわれた、真っ黒なものが、音もなくちかづいてくると、かしこまって老母の膝に身をすりよせてきました。