Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
……だんなさま、つかぬことをおうかがいいたしますが、権六どんの話では、さきおとといの晩お稲さんのすがたにばけた曲者が、だんなさまのおめしあがり物の中へ、毒をいれようとしてたいへんなさわぎになって、だんなさまはそのお稲さんにばけた曲者を、まっくらな中でお斬りになったとかうかがっておりますが、だんなさまはそのとき、曲者のどこをお斬りになりましたか、おぼえておいででございましょうか?」
「ウウムそうか!」
と左近将監にも思いあたるところでもあったのか、一膝のりだしてうなずきました。
「いかにもまっくらな中であったから、しかとはわからぬが……待てよ。そのときわしは左へはらって……右ななめから斬りおろして……」
と左近将監は考えこみました。
「たしかにそうじゃ。右ななめから斬りおろして手ごたえを感じたから、そうじゃ。傷はあいての左肩から乳へかけて、左ななめに斬りつけているはずじゃ」
「なら、だんなさま、たしかにご隠居さまはそのときの曲者にそういございません。疵は左ななめに乳の上へかけて、よほどの深傷のように見うけられました」
「フームそうか!」
と、さすがに左近将監もあまりにも執念ぶかいこの曲者には、ただただあきれるばかり、しばらくはことばもありません。