Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
「ハイ、ご隠居さまのおいいつけで、だんなさまのお屋敷まで、ちょっとまいります」
「なんの用事じゃ?」
「お香を拝借にあがります。ご隠居さまのおおせには、今夜かならず左近将監が見えるほどに、お茶といっしょに香をたかねばならぬが、あいにく香がきれたによって、そなたちょっと藤のところまでいって、香をかりてきよ、とおおせられましたので、お屋敷までいってさんじます」
「ほう! 今夜かならずわしがくるとおおせられてか? フウム……」
年をへた怪猫には、もうじぶんのいくことがわかっていたのか? と将監は心のうちで舌をまき同時によういならぬあいてに、いっそう身のひきしまるのをおぼえました。
「香などたくにおよばん! ひきかえせ、ひきかえせ!」
「でも……ご隠居さまのおいいつけで……」
とお幾は、老母と、左近将監のあいだにはさまって、モジモジとこまっているようです。
「よし、それならいけ、いけ! いそいでかえってくるにはおよばん! ゆっくり話しこんでこいよ!」
左近将監としては、めずらしく思いやりのあることばでしたが、けっしてそうではありません。怪猫をしとめるのには、なまじっかマゴマゴと足手まといの女子どもなどは、いないほうがいいと思ったからにほかなりませんでした。