Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

いきふどう

橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇

橘 外男

Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme

Aozora Bunko

しかもそればかりではない。私の眼の迷いでも何でもなく確かにあの老爺は閼伽桶を手にしていたにもかかわらず、今見ればそこには水一滴すらも注いだ形跡はなかった。当惑した気持というか、自分で自分の眼が信じられなくなった気持というか、私はしばらくは帰るのも忘れてそこに茫然と突っ立っていた。

物怪に襲われた気持というのはこれをいうのか、竦然として足が竦んで、ただザワザワと全身の毛穴が粟膚だってきた。逃げるにも逃げられず進むにも進まれぬ気持というのがこれであったろう。しかも凝乎と墓場に立って考えているとしいんと澄んだ頭の中に想い出されてくるのは、この前私が森の中に隠れていた時にもおそらくあの三人は私のいることには気づいていたのであろう。あの、私の隠れている方に凝乎と眼を投げて行ったあの顔色……あの蝋のような顔色!

何と叫んだかを記憶せぬ。私は一時に総毛立って、無我夢中で墓場を飛び出した。そしていったん飛び出したあとはもう夢中であった。どこをどう飛んだのか、ほとんど転ぶような勢いで長い石段を駈け降りた。鬱蒼として頭上に掩い被さって来そうな真っ闇な寺門を振り返るのも恐ろしくて、私はただひた走りに息の続く限り走っていた。