Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
もう幾らもございませんから」
と亭主は指さしたが、正確に逗子の方から廻って来れば、田浦街道に沿って一時間半ばかりは掛かるということであったが、田舎道に慣れない私にはかなりの疲れを覚えてもう二里や三里くらいは歩いたような気がしていた。私たちはようやく村境らしいところへはいって来たが、やがて亭主は背戸に柿の木をたくさんに植えた日当りのいい村道らしいものに沿うた一軒の藁葺屋根の前で立ち止まると、
「これが茂十どんの家でございます。いますかどうか聞いて参りますからちょっとお待ち下さいまし」
と小走りに駈け込んで行った。が待つ間ほどなく、
「お尋ねに預りました茂十でございますが」
と手拭を取り取り私の前に小腰を屈めたのは年の頃五十五、六くらいの、これも嘘なぞは絶対に言えそうもない物堅い一徹らしいやはり野良着の田舎おやじであった。
ただちょっと二、三承りさえすればいいから、という私を茂十おやじは田舎人の丁重さで無理に奥まった縁側に招じ入れて、渋茶なぞを勧めてくれた。そして亭主と三人梔子の花なぞの咲いた静かな庭を眺めながら、
「さようでございます。わしも於兎吉どんから聞いて魂消ておりますところでございますが」