Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
「明日の講義もまた纏まらないのかしら」
こう思うと彼は自分の努力が急に厭になった。愉快に考えの筋道が運んだ時、折々何者にか煽動されて起る、「己の頭は悪くない」という自信も己惚も忽ち消えてしまった。同時にこの頭の働らきを攪き乱す自分の周囲についての不平も常時よりは高まって来た。
彼はしまいに投げるように洋筆を放り出した。
「もうやめだ。どうでも構わない」
時計はもう一時過ぎていた。洋燈を消して暗闇を縁側伝いに廊下へ出ると、突当りの奥の間の障子二枚だけが灯に映って明るかった。健三はその一枚を開けて内に入った。
子供は犬ころのように塊まって寐ていた。細君も静かに眼を閉じて仰向に眠っていた。
音のしないように気を付けてその傍に坐った彼は、心持頸を延ばして、細君の顔を上から覗き込んだ。それからそっと手を彼女の寐顔の上に翳した。彼女は口を閉じていた。彼の掌には細君の鼻の穴から出る生暖かい呼息が微かに感ぜられた。その呼息は規則正しかった。また穏やかだった。
彼は漸く出した手を引いた。するともう一度細君の名を呼んで見なければまだ安心が出来ないという気が彼の胸を衝いて起った。