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Japanische Klassiker mit Furigana

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みちくさ

道草

夏目 漱石

Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme

Aozora Bunko

彼の眼の前に夢を見ているような細君の黒い眼が不意に浮んだ。すると彼はすぐ自分の立っている高い壇から降りて宅へ帰らなければならないような気がした。あるいは今にも宅から迎が来るような心持になった。彼は広い室の片隅にいて真ん向うの突当りにある遠い戸口を眺めた。彼は仰向いて兜の鉢金を伏せたような高い丸天井を眺めた。仮漆で塗り上げた角材を幾段にも組み上げて、高いものを一層高く見えるように工夫したその天井は、小さい彼の心を包むに足りなかった。最後に彼の眼は自分の下に黒い頭を並べて、神妙に彼のいう事を聴いている多くの青年の上に落ちた。そうしてまた卒然として現実に帰るべく彼らから余儀なくされた。

これほど細君の病気に悩まされていた健三は、比較的島田のために祟られる恐れを抱かなかった。彼はこの老人を因業で強慾な男と思っていた。しかし一方ではまたそれらの性癖を充分発揮する能力がないものとしてむしろ見縊ってもいた。ただ要らぬ会談に惜い時間を潰されるのが、健三には或種類の人の受ける程度より以上の煩いになった。

「何をいって来る気かしら、この次は」

襲われる事を予期して、暗にそれを苦にするような健三の口振が、細君の言葉を促がした。