Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
その内何かで金の要る日が来た。健三は机の上の紙入を取り上げて細君の鼻の先へ出した。
「おい少し金を入れてくれ」
細君は右の手で物指を持ったまま夫の顔を下から見上げた。
「這入ってるはずですよ」
彼女はこの間島田の帰ったあとで何事も夫から聴こうとしなかった。それで老人に金を奪られたことも全く夫婦間の話題に上っていなかった。健三は細君が事状を知らないでこういうのかと思った。
「あれはもう遣っちゃったんだ。紙入は疾うから空っぽうになっているんだよ」
細君は依然として自分の誤解に気が付かないらしかった。物指を畳の上へ投げ出して手を夫の方へ差し延べた。
「ちょっと拝見」
健三は馬鹿々々しいという風をして、それを細君に渡した。細君は中を検ためた。中からは四、五枚の紙幣が出た。
「そらやっぱり入ってるじゃありませんか」
彼女は手垢の付いた皺だらけの紙幣を、指の間に挟んで、ちょっと胸のあたりまで上げて見せた。彼女の挙動は自分の勝利に誇るものの如く微かな笑に伴なった。
「何時入れたのか」
「あの人の帰った後でです」
健三は細君の心遣を嬉しく思うよりもむしろ珍らしく眺めた。彼の理解している細君はこんな気の利いた事を滅多にする女ではなかったのである。