Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
彼女の名前を聞いた刹那の健三は、すぐその弁口に思い到った位、御常は能く喋舌る女であった。ことに自分を護る事に巧みな技倆を有っていた。他の口車に乗せられやすい、また見え透いた御世辞を嬉しがりがちな健三の実父は、何時でも彼女を賞める事を忘れなかった。
「感心な女だよ。だいち身上持が好いからな」
島田の家庭に風波の起った時、彼女はあるだけの言葉を父の前に並べ立てた。そうしてその言葉の上にまた悲しい涙と口惜しい涙とを多量に振り掛けた。父は全く感動した。すぐ彼女の味方になってしまった。
御世辞が上手だという点において健三の父は彼の姉をも大変可愛がっていた。無心に来られるたんびに、「そうそうは己だって困るよ」とか何とかいいながら、いつか入用だけの金子は手文庫から取出されていた。
「比田はあんな奴だが、御夏が可愛想だから」
姉の帰った後で、父は何時でも弁解らしい言葉を傍のものに聞こえるようにいった。
しかしこれほど父を自由にした姉の口先は、御常に比べると遥かに下手であった。真しやかという点において遠く及ばなかった。実際十六、七になった時の健三は、彼女と接触した自分以外のもので、果してその性格を見抜いたものが何人あるだろうかと、一時疑って見た位、彼女の口は旨かった。