Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
それで御互が二、三間の距離に近づいた頃また眸をその人の方角に向けた。すると先方ではもう疾くに彼の姿を凝と見詰めていた。
往来は静であった。二人の間にはただ細い雨の糸が絶間なく落ちているだけなので、御互が御互の顔を認めるには何の困難もなかった。健三はすぐ眼をそらしてまた真正面を向いたまま歩き出した。けれども相手は道端に立ち留まったなり、少しも足を運ぶ気色なく、じっと彼の通り過ぎるのを見送っていた。健三はその男の顔が彼の歩調につれて、少しずつ動いて回るのに気が着いた位であった。
彼はこの男に何年会わなかったろう。彼がこの男と縁を切ったのは、彼がまだ廿歳になるかならない昔の事であった。それから今日までに十五、六年の月日が経っているが、その間彼らはついぞ一度も顔を合せた事がなかったのである。
彼の位地も境遇もその時分から見るとまるで変っていた。黒い髭を生して山高帽を被った今の姿と坊主頭の昔の面影とを比べて見ると、自分でさえ隔世の感が起らないとも限らなかった。しかしそれにしては相手の方があまりに変らな過ぎた。彼はどう勘定しても六十五、六であるべきはずのその人の髪の毛が、何故今でも元の通り黒いのだろうと思って、心のうちで怪しんだ。