Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
という挨拶が何時でも貯えてあった。
「いくら女だって、そう踏み付にされて堪るものか」
健三は時として細君の顔に出るこれだけの表情を明かに読んだ。
「女だから馬鹿にするのではない。馬鹿だから馬鹿にするのだ、尊敬されたければ尊敬されるだけの人格を拵えるがいい」
健三の論理は何時の間にか、細君が彼に向って投げる論理と同じものになってしまった。
彼らはかくして円い輪の上をぐるぐる廻って歩いた。そうしていくら疲れても気が付かなかった。
健三はその輪の上にはたりと立ち留る事があった。彼の留る時は彼の激昂が静まる時に外ならなかった。細君はその輪の上でふと動かなくなる事があった。しかし細君の動かなくなる時は彼女の沈滞が融け出す時に限っていた。その時健三は漸く怒号をやめた。細君は始めて口を利き出した。二人は手を携えて談笑しながら、やはり円い輪の上を離れる訳に行かなかった。
細君が産をする十日ばかり前に、彼女の父が突然健三を訪問した。生憎留守だった彼は、夕暮に帰ってから細君にその話を聞いて首を傾むけた。
「何か用でもあったのかい」
「ええ少し御話ししたい事があるんですって」