Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
「給仕になんぞされては大変だ」
彼は心のうちで何遍も同じ言葉を繰り返した。幸にしてその言葉は徒労に繰り返されなかった。彼はどうかこうか給仕にならずに済んだ。
「しかし今の自分はどうして出来上ったのだろう」
彼はこう考えると不思議でならなかった。その不思議のうちには、自分の周囲と能く闘い終せたものだという誇りも大分交っていた。そうしてまだ出来上らないものを、既に出来上ったように見る得意も無論含まれていた。
彼は過去と現在との対照を見た。過去がどうしてこの現在に発展して来たかを疑がった。しかもその現在のために苦しんでいる自分にはまるで気が付かなかった。
彼と島田との関係が破裂したのは、この現在の御蔭であった。彼が御常を忌むのも、姉や兄と同化し得ないのもこの現在の御蔭であった。細君の父と段々離れて行くのもまたこの現在の御蔭に違なかった。一方から見ると、他と反が合わなくなるように、現在の自分を作り上げた彼は気の毒なものであった。
九十二
細君は健三に向っていった。――
「貴夫に気に入る人はどうせどこにもいないでしょうよ。世の中はみんな馬鹿ばかりですから」
健三の心はこうした諷刺を笑って受けるほど落付いていなかった。