Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

みちくさ

道草

夏目 漱石

Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme

Aozora Bunko

一つは亡くなった人の記念とも見るべきこの品物は、不幸にして質に入れてあった。無論健三にはそれを受出す力がなかった。彼は義姉から所有権だけを譲り渡されたと同様で、肝心の時計には手も触れる事が出来ずに幾日かを過ごした。

或日皆なが一つ所に落合った。するとその席上で比田が問題の時計を懐中から出した。時計は見違えるように磨かれて光っていた。新らしい紐に珊瑚樹の珠が装飾として付け加えられた。彼はそれを勿体らしく兄の前に置いた。

「それではこれは貴方に上げる事にしますから」

傍にいた姉も殆んど比田と同じような口上を述べた。

「どうも色々御手数を掛けまして、有難う。じゃ頂戴します」

兄は礼をいってそれを受取った。

健三は黙って三人の様子を見ていた。三人は殆んど彼の其所にいる事さえ眼中に置いていなかった。しまいまで一言も発しなかった彼は、腹の中で甚しい侮辱を受けたような心持がした。しかし彼らは平気であった。彼らの仕打を仇敵の如く憎んだ健三も、何故彼らがそんな面中がましい事をしたのか、どうしても考え出せなかった。

彼は自分の権利も主張しなかった。また説明も求めなかった。