Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.725 Zeichen · 298 Bildschirme
ゼイゼイする息、しゃくり上げる笛のような泣き声、泥に突いた膝も、衣紋の乱れも、何もかも忘れてしまった母親の盲愛は、さすがの平次も長く見てはいられません。
「こいつはあんまりだ。――勘弁のならぬ奴だ」
平次は口の中でそう言いながら、三村屋の立退き先へ廻りました。太七の家作で、ほんの二三丁先、形ばかりの空家へ、焦げ臭い荷物と一緒に、五六人の人間が詰め込んで居たのです。
「おや、親分さん」
最初に見つけたのは、隣の家主太七の倅、三村屋のお町を火の中から救ったという周助でした。二十四五の平凡な男で、よく言えば実直そうな、鼻の大きい、眼の細い、柔和な感じのする人間です。
「お前さんは?」
「太七の倅でございます」
太七は鎌倉町屈指の家持ですから、親の名を言うのが順当だったのでしょう。
「お町さんを助けたのはお前だね」
「ヘエ――」
周助は照れ臭く鬢を掻きました。
「その時の様子を聴きたいが――」
平次は上がり框に腰をおろしました。奥には、足を挫いた女房のお久や、火傷だらけになった手代の文治が居るので、少なからず迷惑らしい様子ですが、平次の神経は、この時に限って、そんな事に少しも煩わされる様子もありません。