Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

毒舌にまかせて、こう吠えると、権内は、土蔵部屋の戸を開けて中へ躍りこんだ。薄ぐらい行燈に、陰湿な煎じ薬の香が漂っていた。荒っぽい権内の手が、隅の小屏風を刎ね退けたと思うと、あれっ、と眼をさました病婦が、ふいに、乳ぶさから奪われた子を、夢中で、彼と争い合った。

「馬鹿ッ、放せッ、馬鹿。来たが、勿怪の幸いだ。くれてやれ、こんなもの!」

青白い乳ぶさをはだけた胸元を、一つ、蹴とばすと、子は、権内の手に、すぽっと抜き奪われて、虫を起したように、ひいーッと泣く。

「やいッ」

風呂敷包でも持つように、泣く子を、引ッ吊るしたまま権内は、夜叉権という名を欺かない、無情な眼を角ばらして振り向いた。

「――さッ、持ってゆけ!」

ごろん、と因果な肉塊は、うしろに立っていた雲霧の足元へ、抛り出された。ひッ――と泣いていたのが、途端に、黙って、裂けた笛みたいに、ぴくともしなかった。

はッ――と雲霧は足を竦めた。脛から背へ、冷たいものが、さっと這いのぼった。それは、全身を憤怒の火にして、ぶるッと、彼の本性が、その唇をつよく噛んだと思うと、

「あッ、よくも俺の子を」

と、両手で、ぐッと権内の体を前に掴みよせた。