Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
――さすれば、この子は助けてやる」
「ウーム、畜生」
雲霧は、もだえた。歯をかんで、
「畜生めッ。俺の一番弱い所を、うぬあ、よくも知ってやがるな。返せッ、その子を」
「お縄をうけるか」
「くそうくらえッ」
匕首の光が、ぱっと迫ると、小藤次、すばやく、それだけの距離を飛び退いて、
「考え違いいたすなッ。役人ながら小藤次は、そちの悪行ばかりを見てはおらぬ。いずれは、極まる悪党の末路。なぜ、男らしくせぬか。なぜこの子の行く末を、わしに頼まん」
と、彼は智と弁をふるって、この例外な悪人を、江戸へ引っ縛って帰り得るものと信じた。
しかし、飽くまで十手の威厳と、力とで、雲霧を捕えようと焦った外記は、その声を目あてに、ぽっと黒く見えた相手の姿へ、うしろから再び飛びかかって、
「おのれッ」
と組みついた。
「誰がッ、うぬらに!」
外記は、強く振り捨てられた。
それへ、眼もくれず、匕首は小藤次の真っ向へ、
「返せッ!」
と、喚いて、とびかかった。小藤次は駆けだした。そしてまた、
「お縄をうけい! お縄をうけい!」と叫んだ。
「そんな、甘手にのるかッ」
彼の眼は、血走った。兇悪な野性が久しぶりでその面上いっぱいに漲り出して、小藤次を追い廻した。