Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lisez 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 213 caractères · 325 écrans
「よいか」
「分りました」
「こんどが、恐らく、事件の峠だろう。ひとつ、働いてくれい」
「死身になって、やってみます」
「すべて、わしの言った手順どおりにな」
「心得ました」
まだどこか、体の傷手が、癒え切っていないような彼ではあったが、もうその影は、夕闇の往来へ、紛れこんでいた。
その晩――
本石町の佐渡屋の店へ入って行った彼は、夜が更けても、そこから帰った様子がなかった。翌日も、出て来なかった。彼が奥へはいる時に脱いだ草履は、店の者の手に紙包みにされて、下駄箱に隠されてあった。
そうして、櫓下のお半殺しが、江戸の町に喧伝されて、まだ噂も消えない四日目の黄昏れ頃である。
「こんばんは……」
と、やさしい女の声で、灯がついたばかりの店の蔀障子が開いた。
「誰かいないんですか」
女は、土間にはいって、帳場を見まわした。
帳場には、生憎と、誰もいない。
ただ、暖簾をたたんで、店の地袋へ、仕舞いこんでいた小僧が、金行燈の明りに、振り顧って、
「あ……」
と、何かに、恟っとしたように、女を見た。
「誰も、店の衆は、いないのですか」
「へい、おります」
その声までが、妙に、ふるえていた。