Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Lisez 三国志(三) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 312 452 caractères · 628 écrans
雷鼓
一
人の推挙などというものは、うっかりできないものである――と、ひとり恐れ悔いて、当惑の色ありありと見えたのは、禰衡を推挙した孔融であった。
その日、そのせいか、孔融はいつ退出したか、誰も知らなかった。
あとに残った人々の憤々たる声や怒るつぶやきはやかましいほどだった。
張遼のごときは、わけても憤りが納まらないで、曹操に向って、
「なぜあんな乞食儒者に、勝手な熱をふかせて、丞相たるあなたが斬捨てておしまいにならなかったのですか」と、烈しく詰問った。
曹操は、それに答えて、
「いや、予も腹にすえかねて、身が震えるほどだったから、よほど斬捨ててくれようかと思ったが、彼の畸行は、世間に評判のようだし、彼の奇舌は、世上に虚名を博しておる。いわば一種の反動者として、民間へは妙な人気のありそうな漢だ。――そういう人気者へ、丞相たる予が、まじめに怒ってそれを手打ちにしたなどと聞えると民衆はかえって、予の狭量をあざけり、予に期待するものは失望を抱くであろう……愚である愚である。それよりも彼が誇る才能には不得手な鼓を打たせて、殿上で嘲ってやったほうが、面白かろうではないか」