Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Lisez 三国志(五) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 325 249 caractères · 653 écrans
四
「どうだ、この計りごとは。まさか二十騎とは思うまい。四、五百騎にも見えようが」
ほくそ笑みして、彼はただ一人、長坂橋の上に馬を立てた。そして大矛を小脇に横たえ、西のほうを望んでいた。
――ところで、噂の趙雲は、どうしたかというに。
彼は襄陽を立つときから、主君の眷属二十余人とその従者や――わけても甘夫人だの、糜夫人だの、また幼主阿斗などの守護をいいつけられていたので、その責任の重大を深く感じていた。
ところが、前夜の合戦と、それからの潰走中に、幼主阿斗、二夫人を始め、足弱な老幼は、あらかた闇に見失ってしまったのである。
趙雲たるもの、何で、そのまま先を急がれよう、彼は、血眼となって、
「君にお合せする顔はない」
と、夜来、敵味方の中を、差別なく駈けまわって、その方々の行方をさがしていたのだった。
四
面目――面目――何の面目あってこのまま主君にまみえん?
「生命のある限りは」
と、趙雲は、わずか三十余騎に討ちへらされた部下と共に、幾たびか敵の中へ取って返し、
「二夫人は何処? 幼君はいずれにおわすぞ」
と、狂気のごとく、尋ねまわっていた。
そうして、四方八面、敵味方の境もなく、馳けめぐっている野にはまた、数万の百姓が、右往左往、或いは矢にあたり、石に打たれ、または馬に蹴られ、窪に転び落ちなど、さながら地獄図のよう